ふっ素樹脂を含むパーフルオロアルキル化合物(PFAS)に関する質問をQ&A形式でまとめました
Q. PFASとは?
Q. 特定PFASとふっ素樹脂との違いは何ですか?
Q. PFASに関する懸念事項は何ですか?
Q. すべてのPFASは、人間と環境に対して同じ懸念を引き起こしますか?
Q. PFASはなぜ規制されるのですか?
Q. ふっ素樹脂は毒性がありますか?
Q. ふっ素樹脂は何に使用されますか?
Q. ふっ素樹脂はなぜ重用されるのか?
Q. ふっ素樹脂はヨーロッパでどのように規制されていますか?
Q. ふっ素樹脂は今後使えなくなるんですか?
Q. 欧州PFAS 制限案とは何ですか?
※あわせて 「PFASに位置づけられるふっ素樹脂 5つの疑問」 を1枚にまとめましたのでご参照ください
PFAS(ピーファス)とは、"Per- and polyfluoroalkyl substances"の略で、有機ふっ素化合物群の総称です。
分子構造に、完全にフッ素化されたメチル(CF3-)またはメチレン(-CF2-)の炭素原子(水素/塩素/臭素/ヨウ素原子が結合していない)を少なくとも1つ含む物質を指します。
PFASは、低分子化合物のフッ素ガスから高分子化合物のふっ素樹脂まで様々な性状・特性を持つ1万種を超える広範な物質群で、環境中での残留性が高い共通の性質を持ちます。
PFASには、PFOS(Perfluorooctane sulfonic acid)及びPFOA(Perfluorooctanoic acid)などのヒト健康への悪影響が指摘され、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で規制された特定のPFASがある一方で、OECD(経済協力開発機構:先進38か国が加盟する国際機関)が定めた低懸念ポリマーの基準を満たす安全なふっ素樹脂、ふっ素ゴムも含まれます。
近年、報道ではPFASの代表物質のようにPFOS及びPFOAが紹介され、あたかもPFAS全体が毒性や生体蓄積性を有するというような誤った認識が散見されます。FCJ(日本フルオロケミカルプロダクト協議会)及び日本弗素樹脂工業会ではストックホルム条約で規制済みのPFASを『特定PFAS』と呼称し、他のPFASと区別して表現することを提案しています。
2023年3月、欧州では、これらのPFASを一括りに禁止する規制案を公開し、我々、日本弗素樹脂工業会は規制庁であるECHA(欧州化学品庁)に対し意見だし(パブコメ)を行ない、反対を表明しております。
PFOSやPFOAなどの特定PFASは、分解されにくいため環境中に残留し、河川や地下水などの水中や野生生物の体内に存在していることが確認されています。これらは健康上の懸念が指摘され、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で規制されています。詳細は環境省のQ&Aを参照してください。
参考資料:【環境省 PFASに対する総合戦略検討専門家会議】
◆PFOS、PFOAに関するQ&A集
一方ふっ素樹脂は、極端に高分子のPFASであり、商業的には14種類が普及しています。いずれも化学的に安定で毒性がなく、水に溶けないので移動しないため、懸念される環境と人への健康に大きな影響はないと報告されています。
PFAS(有機ふっ素化合物)という言葉の定義が非常に広いため、性質の異なるふっ素樹脂も同列に並べられています。
その違いは、 内閣府 食品安全委員会 発行のファクトシート「ふっ素樹脂」と「パーフルオロ化合物」の比較でわかります。
参考資料:【内閣府 食品安全委員会】
◆ふっ素樹脂 ファクトシート
◆パーフルオロ化合物 ファクトシート
PFASの中には低分子で水溶性があり生体蓄積性があるものがあります。
特定PFASは低分子で分解されにくく体内に一時的に蓄積されるため、健康上への懸念が指摘され、すでに残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で規制されています。
PFAS概要図に示すとおり、PFOA及びPFOSが、難分解性で生体蓄積性が高く、長期的なばく露により健康への悪影響が認められることから、はじめに汚染物質として注目されました。
また、フルオロテロマー等が物質自体の分解し易さからPFOAなどの発生源になり得ることが指摘され、PFAS全体に環境懸念が広がった経緯がありました。
高分子のPFASであるふっ素樹脂は、PFASの一部ではありますが、分子量が極端に大きく、体内に吸収されず体内をそのまま通過するため、人への健康に大きな影響はなく、安定性が高いため自然界では分解されない物質と報告されています。
参考資料:【内閣府 食品安全委員会】
◆ふっ素樹脂 ファクトシート
いいえ、すべての PFAS が同じではありません。
PFOAやPFOS などの特定PFASは、人間の健康と環境に懸念を引き起こすことが指摘されており、すでに残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で規制されています。
一方ふっ素樹脂などは、人への健康に大きな影響へはないと報告されています。
Q. ふっ素樹脂は毒性がありますか?もあわせてご参照ください。
低分子で水溶性が高い特定PFASは、難分解性、かつ環境中での長距離移動性があり、生体蓄積性及びヒト健康への影響があることが報告されているので、現在既に使用を禁止されていたり、今後も禁止される物質が増えていく可能性があります。
一方、PFASの一分類であるふっ素樹脂は、安定で毒性がなく、人の健康と環境への影響はないと報告されていますので、当工業会ではふっ素樹脂はいかなる規制においても免除されるべきと考えます。
ふっ素樹脂については、過去に様々な健康影響を確認する試験が行われています。国際がん研究機関(IARC)は、ふっ素樹脂の1つであるPTFEに対して、グループ3(ヒトに対する発がん性について分類できない)と評価しています。また焦げ付き防止のためにふっ素樹脂でコーティングされた調理器具を使用する場合、剥がれ落ちたコーティング破片を飲み込んだとしても体に吸収されず体内を通過し、体内でいかなる毒性反応も引き起こさないため、体に影響ないと報告されています。
参考資料:【内閣府 食品安全委員会】
◆ふっ素樹脂 ファクトシート
ふっ素樹脂は、私達に身近な家庭用品では食品調理器具の焦げ付き防止のコーティング、産業分野では半導体製造装置の重要部品に使用されています。またレーダーのアンテナ基板や自動車の電気ケーブル、燃料チューブなどにも使用されています。
食品分野では、調理器具のコーティングに使用されており、建築分野ではふっ素樹脂でコーティングしたファブリックを建築用膜材に使用しています。
さらに外壁用塗料、免震装置の滑り材にも使用されています。医療分野では、カテーテルに使用されるチューブなどの医療機器に使用されています。
このようにいろいろな分野で使用されており、世の中にはなくてはならないものです。
参考資料:【一般社団法人日本弗素樹脂工業会 ホームページ】
◆ふっ素樹脂製品の用途
ふっ素樹脂は、非粘着性、耐薬品性、耐熱性、純粋性、長寿命と複数の優れた性能を併せ持つ樹脂です。成形性にも優れているために、家庭用、産業用、医療用などあらゆる分野で使用されています。
長寿命のため経済的にもエネルギーの消費が減らせるなど環境にも優しい樹脂です。
参考資料:【一般社団法人日本弗素樹脂工業会 ホームページ】
◆ふっ素樹脂製品の用途
現在、ふっ素樹脂はヨーロッパで製造、使用又は上市に関する規制を受けていません。
ただし、2023年3月22日に欧州PFAS規制案が公開され、ふっ素樹脂を含む広範なPFASを、いくつかの用途で猶予期間が設定されているものの、原則的に、一律で禁止することが検討されています。
これに対し、日本弗素樹脂工業会では欧州化学品庁(ECHA)への意見だし(パブコメ)を通して、反対を表明しています。
日本弗素樹脂工業会以外にも、PFASを一律で禁止する案に疑義をもつ団体は数多くあり、‟経済産業省 製造産業局 素材産業課 課長”、‟一般社団法人 日本経済団体連合会”(経団連)、その他多くの業界団体が見直すべきとのパブコメを提出しています。
現在、一部の地域で消費者用途のPFAS使用に関して規制がありますが、産業用途のふっ素樹脂は全世界で製造、使用又は上市に関する規制を受けておりません。
ただし、欧州及び米国の各州においてPFAS規制が検討されており、今後の進行状況を注視する必要があります。
欧州では2023年3月22日にPFAS規制案が公開されました。このまま規制案が成立すると、ヨーロッパ域内ででふっ素樹脂を製造、使用することができなくなる可能性があります。これに対し、日本弗素樹脂工業会では欧州化学品庁(ECHA)への意見だし(パブコメ)を通して、反対を表明しています。
日本弗素樹脂工業会以外にも、PFASを一律で禁止する案に疑義をもつ団体は数多くあり、‟経済産業省 製造産業局 素材産業課 課長”、‟一般社団法人 日本経済団体連合会”(経団連)、その他多くの業界団体が見直すべきとのパブコメを提出しています。
なお、日本は規制の対象範囲ではないので、今後も日本ではふっ素樹脂を使用できます。
ドイツ、スウェーデン、オランダ、デンマーク、ノルウェーの5カ国からECHA(欧州化学品庁)に提案し2023年2月7日にECHAが公開した有機フッ素化合物の規制案のことです(3/22に正式公開された)。
ふっ素樹脂を含む殆どの有機フッ素化合物を製造、上市、使用を禁止する規制案です。当工業会では、ふっ素樹脂は化学的に安定で毒性がなく、人や環境に影響を与えることのないことから、規制に対して免除されるべきと考え、行動しています。
日本弗素樹脂工業会以外にも、PFASを一律で禁止する案に疑義をもつ団体は数多くあり、‟経済産業省 製造産業局 素材産業課 課長”、‟一般社団法人 日本経済団体連合会”(経団連)、その他多くの業界団体が見直すべきとのパブコメを提出しています。